2017/10/19 01:28 午前

ニューゲームズオーダー、完全新作ボードゲーム「枯山水」の話。その4。

  • 2014/10/23 11:59 午後
  • 投稿者:
さて本日は、枯山水の内容物の制作についての話をします。
内容物制作といっても、その仕事の中身はアートワークと生産に分かれます。
枯山水はフルサイズのボードゲームですし、そのテーマの難しさ、
そして山田さんのデザインセンスとの刷り合わせという問題もあり、
しかも生産上の様々なコストダウン手法によってかかる調整も生じてくる。
アートワークのことに限ってもお話したいことは山ほどありますが、
(お話する順番が難しいのですが)一旦後に回し、
生産(つまり西山担当パート)の話からしたいと思います。


枯山水の制作を始める時点から、今回の枯山水の生産は、概ね国内、
つまりタチキタ西山管轄で行うことを決めていました。その理由は、

・予定する生産部数が少ない
・日程が厳しい
・管理が難しい物品がある

ということです。

ニューゲームズオーダーでは、高価格帯の製品の1回での生産部数は、
3000円以内のお手頃なゲームの部数より基本少なくしています。
これは単純に低価格帯の製品の方が遥かに売れるスピードが速いこともありますし、
単純に予算の問題もあります。枯山水はがっちりと高価格帯の為、
海外生産に耐える部数の生産はあり得ない、ということです。加えて海外生産は、
今回のような期間がしっかり決められた中で行うにはトラブルのリスクがあります。
そして何より生産難度マックスの「石」。
何らかの方法で質の良い物をリーズナブルに海外生産する道筋が立ったとしても、
その生産を品質を保って時間内にで管理するのはなかなかの冒険です。
国内であれば何かトラブルが起こっても日本語で現場とコミュニケーションできますし、
いざとなれば現地に赴くこともできますが、海外ではそう簡単にはいきません。
小さな工夫を積み重ねてコストダウン、品質向上、さらには新たな生産方法の工夫、
ということをしなければ、とても枯山水を想定コスト内で作ることはできません。

ということで、全体像を把握する為、枯山水を構成する物品について一通りおさらいです。

・箱…タチキタプリントの得意領域の一つ。コストも納期も想定できている。○。
・寺院ボード…メインボード。これも得意。バントゥと同じ仕様で確定。○。
・庭園ボード4枚…A4のボードなので簡単かと思いきや、独特の豪華仕様により難解。△。
・砂紋タイル80枚…タチキタの専門外だが初挑戦。80枚多いなあ、コスト掛かる!△。
・カード23枚…タチキタ専門分野。カードはお値段はりますが生産は見通しあり。○。
・禅僧駒4個…これについては例外的に海外発注。吉田担当。納期が怖いので△。
・円相駒4個…同上。△。
・早見表4枚…ニューゲームズオーダーの領域。たいへんですがいつもの仕事なので○。
・説明書1部…同上。中身の問題はともかく生産は問題なくできる。○。

で、

・石25個…×。どうやって作るのかも見えてなければ納期もコストも滅茶苦茶かかる予感しかない。

ええ、これに加えてシュリンクとかセットアップ工賃とかカートン箱とかはあるのですが、
一応雑費ということで置いておきましょう(馬鹿にならないお金かかるけど)。

内容物、改めて書くと…余りの特盛りぶりに、もうホント溜息しか出ませんな(笑)。
ゲーム3つくらい作れそう。というか、3つ分くらいのコストが余裕でかかります。
西山は完全にお鉢が回されてくることは覚悟してたものの、改めて仕様を確認した時は
怨嗟の声を上げてました(笑)。いや笑い事じゃなく自分も一緒に地獄行きなんですけども。

ともあれ時間は無い。西山も私も、他の仕事と並行しながら具体的な生産の検討、
試作を開始しました。最重要にして最優先の課題はやはり石。
こればかりは10年経っても変わらない、西山の「調査」から始まりました。
この調査フェイズ、西山以外は未だにどうやって調べているのかはわかりません(笑)。

しばらくの間は、さしたる収穫は得られていない、検討したが没だった、
コストが合わない、という報告が繰り返されました。最も目標に接近した条件で
「海外生産、塗装したフィギュア1個あたり70円」というライン。
(先方の製造ラインが繁忙期の為そもそもいっぱいで、前提から無い話として出ただけでした)
1個70円、自分たちが作る程度の個数で言うと何もおかしい金額ではありません。
ただ、70円×25個は?1750円です。売価ベースでない、原価ベースで考えると、
1750円という額は、そのコストだけでニューゲームズオーダーの5000円のゲームの制作費に相当します。

わかってはいた。なかなか絶望的だなあこりゃ、と思いました。


ただ、様々な仕事に忙殺されながらさらに重苦しい時間が経ったころ、
西山から「一応当たりを見つけた」という報告がありました。

国内生産。素材は「石膏」でどうか、ということでした。

コストを聞くと、未だ高くはあるものの70円という基準よりはぐっと低く、
そして海外でなく愛知で生産できる、という好条件でした。
何より石膏と言えば鉱物ですから、石材と言って差支えない。
これ以上の打開案は無い、と思いましたので、それで行こう、と私は即決しました。
西山が生産をお願いする「瀬戸石膏組合(http://www.aiweb.or.jp/kumiai/C053/)」さんの
現地まで伺い、製作物の用途について話し合い、着色は可能か、強度はどうか、
納期はコストは、という打ち合わせを行いました。結果、苦しいが行ける、となりました。
クオリティも質感もありましたが、それ以上にぱっと見のイメージよりはずっと
丈夫なのが大きかった。ご購入のお客様にお試しいただくわけにはいきませんが、
テーブルから床に落としたくらいでは割れないです(勿論落とさない方がいいです(笑))。

ただ、問題は色。石膏は基本的には白です。複数の顔料を混ぜるなどして着色を試みたものの、
やはりそれで石完成とするレベルまでは難しい、という結論でした。

ということで、結果としては…久しぶりに、「ぼくらの火星」と同じ方式が取られることになりました。
つまり、複製した石膏を自分たちで塗る、ということです。行きますよー西山・関の地獄のお家芸!

まず自社で原型を制作し、それを元に10個ほどの先方の型作りの元となる親を作成。



パテとウッドチップを組み合わせているそうです。これを25種。
(本当は山田さんが作ったのを含め50ほどあった原型から見た目・バランスから25種選抜してたり)
これをシリコーン型で10個ほど複製し(つまりこれだけで250個)、工場に納入。
この各10個をさらに複製で増やしてもらうわけです。
マスターの原型からすると孫世代が実際の枯山水の内容物になるということです。
ちなみに250個複製の時点で、工房となったタチキタプリント内はさながらシリコン地獄、
石膏地獄になってました。

次に先方工場での生産です。石膏なので複製の後乾燥(屋外で並べて干す)
などの工程を経て、届いた物を塗装します。



弊社お抱えの塗装職人・関(ホントはDTP担当)が一つ一つ丁寧に塗り上げます。
番号はそれぞれの石の塗り手順をバリエーションを変えて指定しているため、個体識別用です。



色は山田さんの応募作を踏襲して、リアリティとフィクションのバランスを考えてます。
(あと塗る手間を削減しつつバリエーションを出しているという話もあります)
信じられないですが、数時間でこの量(と言っても9セット分ですが)塗っています。



完成です。僅かな差はあると思いますが、このような石膏を塗装した石が枯山水に入ります。
原型は敢えて山田さん作・西山作・関作を混合してます。


石の種明かし、こういうことです。ちなみに散々ネタにしている余談ですが、
この石25個のコスト、塗装前の時点でモダンアート日本語版1個(3000円)のコストを上回ります(笑)。
売価6000円は無理でしたが、西山の血の滲むようなコスト削減バトルにより、
税抜7500円のラインを死守した格好です。というか実際は、発表直前まで売価10000円で9割決めてました。
自分は全然高くないと思ってるんですが、あと山田さんも10000円とか全然いいんじゃないですか、
と仰ってましたが、それでも何とかより多くの人に遊んでいただきたいので最終的に下げました。
(ホントは塗装済み10000円、未塗装7500円にしようと思ってましたが統一しました)

どっちにしてもたくさんの人に買ってもらえないなら、守りに入って、
絶対に買っていただける方々におすがりして10000円の方が、
自分たちの安全はいくばくか計れます。ただそれじゃあつまらないですし、
いつも一番応援していただいている皆様に顔向けできません。
自分たちは最高のボードゲームを作っていると思ってますので、
できるなら多くの皆様に遊んでいただきたいのです。
税抜7500円という値段は、要は切りよくする為(税込8100円になって下二ケタ00になるから)
に過ぎませんが、高価格帯ながら一応一般的なボードゲームの値段になってると思います。

あと一点、「ぼくらの火星」と違うのは、これは売れればちゃんと儲かります。
手塗りが入りますから生産は少しずつしかできないですが、卸でも何とか出せる原価です。
それが4年間での少しの、しかし自分たちには大きい進歩ってことです。

あと重要な話ですが、10月29日現在、塗られている石は写真に写している9セット分で全部です(笑)。
この所の悪天候で工場での乾燥が終わらず、まだ複製物が届いていないのです。
ようやく明日300セット分、7500個届くそうです。

ゲームマーケットまであと2週間余り。関が塗り上げると言ってます。ホントかよ(笑)!
(多分ゲームマーケット前1週間くらいB2F閉めると思います)
今回自分は助手なんでお手伝い頑張ります。関は社内随一のペインターなので、
クオリティ維持の観点から本塗装はほぼ全部関が行う予定です。

うーん、石の話しかしてないのに、既に頭おかしいなあ。困ったもんだっはっはー。
次回は他のコンポーネントの話、あとできればアートワークの話に行きましょう。

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