2019/08/24 02:46 午後

Dominion (ドミニオン) / by Donald X. Vaccarino

  • 2008/11/15 05:08 午前
  • 投稿者:


内容物はカード枚数500枚、以上!のカードゲーム。B2F価格6800円。
まあ枚数100枚のカードゲームが1500円であることを考えると納得、という所でしょうか。
しかし実はこのゲームの本質を理解すると、むしろそのコストパフォーマンスの良さに驚愕することになります。
さてゲーム内容。
開始前に各自自身のデッキ、つまり山札として10枚のカードをを受け取ります。
内訳は1点の勝利ポイントカード「土地」3枚(自身の国の領地)と価値1の財宝カード「銅」(お金)7枚。
ゲーム開始時に、手札としてここから5枚引きます。
後はゲーム終了まで、時計回りに各プレイヤーが手番を行っていきます。

場には王国カード(アクションカード)10種、財宝カード3種、
勝利ポイントカード3種がそれぞれ数枚ずつ置かれています。
各カードにはその効果とコスト、すなわち価格が記載されています。
プレイヤーは自身の手札にある財宝カードを消費し、場にあるカードを1枚購入します。
購入したカードは自身の「捨て札置場」へ。手札ではなく捨て札置場へ!これが1つ目の肝です。
購入が終わったら使ったカード、使わなかったカード、
全てを自身の捨て札置場に置いて5枚を引きなおし、手番終了。

最初に受け取った山札は10枚なので、2回手番を終えると山札が切れます。
ここで捨て札をシャッフルして山札を作り直します。
すると、ここまでに購入して捨て札置場に置いていたカードが山札に含まれることになります。

手番中には原則として、アクションカードを1枚使用し、
それから場からカード1枚を購入することができます。
ただしアクションカードには、追加でアクションカードを使えたり、購入できるカード枚数が増えたり、
その手番に使用できるお金をプラスしたり、その他様々な効果があります。
アクションカードの効果を複数組み合わせることで、一気に効率を増すことが出来ます。

財宝カードには1枚で価値2の「銀」、価値3の「金」があり、これはまた大きな意味を持ちます。
手番開始時の手札は5枚に限られている為、その中に価値の高い財宝カードが含まれていればいるほど、
コストの高い強力なカードを購入しやすいということなのです。

そして勝利ポイントカード。これがゲームに勝利する為に必要なカードです。
ドミニオンは、ゲーム終了時に自身のデッキ(手札だけでなく山札、捨て札も含む全て)
に含まれている勝利ポイントが最も多いプレイヤーが勝利します。
ただし、ゲーム中手札として引いた勝利ポイントカードは何の効果も持ちません。
デッキの効率という意味では、勝利ポイントカードはネガティブな要素となるわけです。

場に有るカードが3種無くなるか、最も価値の高い勝利ポイントカードである
「領地」カード(6勝利ポイント)が無くなると、ゲーム終了です。
前述の通り、最も多くの勝利ポイントを持っているプレイヤーが勝利します。


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このドミニオンというゲーム、一言で「デッキ構築のゲーム」と紹介されることが多いようです。
ゲームを通じてカードを購入して捨て札に→捨て札切りなおして山札にしてデッキ枚数増加、
を繰り返してデッキを作っていくゲーム内容の為、表現として間違ってはいない。
しかしそれを字義通り取ると、いささかこのゲームを過小評価することに繋がります。

デッキ構築のゲーム、と言えば、多くの人が思い浮かべるのはTCG、トレーディングカードゲームでしょう。
ランダムパックから出てきたカードを組み合わせ、自身が考える効率の良いデッキを作り、対戦に臨む。
マジック・ザ・ギャザリングが世に広めた「デッキ構築」という遊びの形態です。

ただし、MtGを始めとするTCGは、多くの場合ゲームごとに「60枚」「50枚」等、
予めデッキ枚数が決められています。

(厳密に言えば「~枚以上」とされている場合も少なくありませんが、多くのゲームにおいて同種のカードはデッキに原則X枚まで、というルールが付記されている為、デッキの性能を安定させる目的でデッキ枚数はルールが定める下限になるケースが大半です)

ドミニオンの稀有な点、それは完成形としての数十枚のデッキの出来を競うのではなく、
デッキの「成長曲線」を競う部分にあります。
デッキは10枚で始まり、これが無くなって切りなおされた後には大抵の場合12枚になります。
これが切れると3回目の山札は15~16枚。
アクションカードの効果によって購入枚数は徐々に増していきます。
そしてカードを増やすほどに、デッキに各プレイヤーの「色」が生じていきます。

ゲームに勝利する上で重要なのは、ゲーム中のどの時間帯にも、より効率よくデッキを働かせ続ける事です。
デッキが20枚近辺で絶好調であったプレイヤーが、30枚近くになる頃に絶不調に陥ることは珍しくありません。
そしてその不調の原因が実は、20枚近辺での絶好調にあったりするのです。
遊んで感じたのは、どのプレイヤーにも少なからぬバイオリズムが生じ、
デッキが上手く機能する時間帯、苦しくなる時間帯があるということです。
これは純粋にデッキ構築の成否のみならず、カードゲームに本来的に存在する「引き運」にも左右されます。
手札は毎手番全取替えで5枚、というルールが、あらゆる点で絶妙に機能しています。

そして、ゲームの勝利条件である勝利ポイントカードの位置づけも素晴らしい。
一部の方々の感想として「インタラクションが少なめ」という話があるようですが、
おそらくRftGの経験を受けての錯覚だと思われます。
その本質が理解されていくのに、多くの時間を要する事は無いでしょう。

勝利ポイントカードの購入は、(アクションカードにあるアタックカードの使用以上に)他プレイヤーへの攻撃として機能しています。
最も価値の高い6勝利ポイントのカードの購入は、他プレイヤーとの点差を6点引き離すと共に、
ゲームを終了に近づけます。これ以上ない直接攻撃。MtGにおける「相手のライフを削る」行為と言えるのです。
TCGを徹底的に換骨奪胎し目先を巧妙に変えているがゆえに、
マルチゲームにおける直接攻撃のネガティブな側面がオミットされ、
ソロプレイ感覚という錯視として現れているのではないでしょうか。

さらに勝利ポイントカードは、プレイヤーを勝利に近づけると同時に、多大なリスクをもたらします。
勝利ポイントカードは、手札としては一切の効果を持たない無用の長物なのです。
無用のカードがデッキに1枚含まれるだけで致命傷になりうる事は、TCG経験者ならば誰しもご存知でしょう。
勝利する為には、その無用のカードを1枚また1枚とデッキに入れていかねばならない。
ドミニオンにおける各プレイヤーの手番数にはほとんど差が出ないので、
少しでも多くの勝利ポイントカードを購入する必要に迫られます。
しかし勝利ポイントカードを購入すればする程にデッキは重荷を背負い、弱体化する。現在の得点が未来の得点を脅かすわけです。
ここに私達が遊ぶボードゲーム・カードゲームの王道的ジレンマが備えられています。


勝利ポイントをめぐっての、身を削っての攻防。カードの購入。手札1周ごとに繰り返されるトライ&エラー。
これは「デッキ構築」という一言で片付ける事は出来ません。これはTCGという「遊び」を再現したゲームです。
構築し終えたデッキでの対戦は、TCGという遊びの主要な部分ではありますが、その全てではないのです。
カードの性能を判断し、評しあい、実験し、失敗し、成功し、さらに加えるカードを考える。
自身のデッキの強化を願ってカードを購入する、という行動自体が、TCGの楽しみの一端を担っているのです。
TCGという「ジャンル」の体験が、このドミニオンという「ゲーム」の中に内包されてしまっている。
正直言って、こんなことが可能なのか、と感じました。作り手の描いた壮大な設計図に戦慄を禁じえません。


そして、これはゲームとしてではなくビジネスとして。ドミニオンの存在は、TCGを脅かしえます。
TCGはその魅力の一方、少なからぬ金額を投じる必要の有る遊びです。
少し遊んで数万円、熱心に遊べば数十万円、さらに上の単位を投じるプレイヤーも珍しくないでしょう。
しかしドミニオンは6800円(B2F価格)。
しかも、(まだあるのかと感じますが)ドミニオンは非常にリプレイアブルなゲームです。
ルールが分かり易く、30分で1ゲーム遊べるという基礎的な部分に関しては、
列記するまでも無くご理解いただけるでしょう。
ゲームの性格を決定する王国カードはゲーム中10種類が使用されますが、
コンポーネントには25種類の王国カードが含まれています。
25種類から選ぶ10種類の組みあわせ!同じ組み合わせで遊んでも、他のプレイヤーが取るアクション、
自身が購入するカードの種類によってゲーム内容は大きく変容するのに、です。
これは私の推測ですが、どの10種類を選んでも、このゲームのバランスは容易に崩れはしないと思います。
それはこのドミニオンのバランスが、プレイヤー同士の均衡関係が生み出すものだからです。

このゲームは、ずっと遊び続ける事が出来るでしょう。
それで足りなければ、…拡張のカードセットさえ出しやすいゲームシステムです。
この枠組みが広まれば、TCGは必要なくなってしまいかねません。


最後に。プレイ前、私は「ドミニオン」というタイトルにピンと来ませんでした。
平凡というか、意図に欠けると、そう思っていました。

しかし。

このゲームが、当初から、TCGというビジネスを脅かすつもりで作られたとしたら?
盛大な邪推に過ぎないかもしれませんが、非常に合点がいってしまうのです。
市場規模という観点から言えば、TCGの登場以降、ボードゲーム・カードゲームは後塵を廃し続けています。
しかし近年はTCGの落ち着きとボードゲームの拡大から、彼我の距離は以前より接近している。
Rio Grande Games社長Jay M Tummelson氏とHans im Gluck社長Bernd Brunnhofer氏。
現在のボードゲーム業界を担う2人の大物の仕業だとすれば、
そんな妄想にも多少の現実味があるのではないでしょうか(笑)。
まあ、あくまで妄想ですが…。

最後に。妄想をたくましくする私のような人間からすると、暗喩にしか見えないドミニオンルールの序文。

You are a monarch, like your parents before you, a ruler of a small pleasant kingdom of rivers and evergreens. Unlike your parents, however, you have hopes and dreams! You want a bigger and more pleasant kingdom, with more rivers and a wider variety of trees. You want a Dominion! In all directions lie fiefs, freeholds, and feodums. All are small bits of land, controlled by petty lords and verging on anarchy. You will bring civilization to these people, uniting them under your banner.

But wait! It must be something in the air; several other monarchs have had the exact same idea. You must race to get as much of the unclaimed land as possible, fending them off along the way. To do this you will hire minions, construct buildings, spruce up your castle, and fill your treasury. Your parents wouldn't be proud, but your grandparents, on your mother’s side, would be delighted.


ドミニオン、間違いなく価値有るゲームです。よろしければ遊んでみてください。

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